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13.燃料セッティングについてのヒント

ENIGMAを使ってのセッティングをしていく上でのヒントになるような事項を参考までにまとめています。エンジンの事をご存知の方も是非一読してセッティングにお役立て下さい。

燃料セッティングは基本的に「どの回転のとき」と「どの位アクセルを開けているか」で噴射量(又は減量量)を決めます。キャブ車などは回転が上がれば負圧でメインジェットの穴から燃料を吸い出し、キリ吹き状態にして燃焼室に入ると言う構造ですが、インジェクター車は決められた条件でインジェクターから燃料を噴射しているのです。基本的には燃料MAPに数値を入れてこの燃料を変化させます。
ENIGMAは同じ回転でもアクセルを急に大きく開けた時などにメイン噴射とは別に非同期で加速噴射させる事が出来ます。
この機能を上手く使えば特にアイドリング近辺から吹き上がるまでは大きな効果があります。

エンジン内に吸入された一定量の燃料が燃焼して出た排気ガスを測定すると(空燃比計測器を使用する)ある空燃比が出てきます。それを見て燃料を上下させます。キャブ車と違い、インジェクション車は本機で直ぐに燃調できるので計測器の数値を見て素早くセッティングします。

空燃比とは、一般的に混合気における空気質量を燃料質量で割ったものを言います。
さらに理想空燃比と言うものがあります。
これは約14.7(空気):1(燃料)の割合で計算上、燃料が完全燃焼する割合と言われています。全ての回転/アクセル開度でこの数値にすれば良いように思えますが、実際にはエンジンの発生する熱を抑える為だったり、より高い燃焼エネルギーが必要な回転域だったりで、各エンジンの回転/アクセル開度によって狙っていく空燃比の設定値は変わってきます。測定は空燃比計や空燃比ロガーなどを用いて行います。
(理想空燃比を離れても燃焼はします。8:1から20:1まで位なら燃焼室での燃焼が可能です。しかし燃料が濃いと当然カブリますし、薄いとパワーが出ない上、高い確率で壊れる原因になります。あくまでも理論的に燃える限界数値と考えてください。セッティングをするバイクには空燃比計(ワイドバンド空燃比計)があるととても便利です。純正のO2センサーはナロータイプで正確に測る為の物ではありません。また安価な製品もナロータイプが多く(センサーから出ている配線が2本か4本)これらの製品の数値は安定して表示出来ない上必ず正しいとは限りません。排気量UPしているバイクなどは具体的な燃調MAPが無いので、そのバイク(エンジン)の最大トルクの辺りでもっとも多くの燃料を供給できるようにサービスマニュアル等のトルクカーブグラフを参照に設定してみます。

ノーマルエンジンのバイクはそれほど新たに燃料を増量/減量する必要がありませんが一般的に市販車はエンジン保護の観点から燃料を少し濃い目にしているものや、燃費や排気ガスをクリーンにする目的から全体的に薄めに設定されている物もあり、その部分を増量又は減量セッティングして適正化する事で乗り手が求めるエンジン特性に近づけて乗り味や性能向上する事ができます。しかし極度の減量などは安全マージンはその分減りますし、増量は燃費の悪化に繋がります。マージンの見極めも肝心です。

参考値として排気量が150~160cc位のバイクなら最大増量は1000μs~1500μs位で基本は空燃比計の数値を見て判断します。

エンジンが冷えている始動時などは、インジェクターから噴射されたガソリンが綺麗に細かく霧化できず、吸入通路(インマニ内壁)などにも付着してしまいます。
これでは規定量が燃焼室まで届かない上、燃焼効率が低下します。そのような時のセッティングは、濃いめにします。もちろん、エンジンの調子や温度よっても左右されます。
参考データとして、完全に冷えた状態での始動時には、空燃比で5:1とも言われています。
始動した後のアイドリング時、または低速時ではスロットルから吸入する空気の量が少ない為、排気の力も弱くなります。 その時、燃焼室内では、残留排気ガスが残っており、ここに新しい噴射により混合気が入っても薄まるばかりで、燃焼の力が少なくなります。 この領域は、12:1といった濃いめの空燃比に近づける事もエンジンを素早く吹き上がらせる為には有効な手段です。しかし空燃比をリッチ(濃い)側に振る事になりますので、あまり大きく変更するとカブりやすく燃費は悪化していく傾向になります。

※排気効率が高いストレートマフラーやエンジンにBIGバルブを組んだ場合などは、残留排気ガスの残り具合が変わってきます。
当然上記のような対処方法が必ずしも効果を上げない時もあります。
※大きなインジェクターを使っている場合は、ノーマルのECUデータで噴射すると当然濃くなるので燃料を絞る方向でセッティングすることが統計では多い様です。

通常走行している時や中高速時にはエンジンの負荷は比較的軽く、燃費向上などを考えると空燃比は14~15位にする事が多く見られます。
また負荷が軽い時と重い時とでは当然狙う空燃比数値も変わってきます。しかしバイク走行時の色んな事項を勘案すると、経済燃費はあまり考えず、個人でのセッティングでしたら理想空燃比(14.7:1)を超えない程度(13.5:14位)にまとめる方が無難と考えます。
経済空燃比にチャレンジするなら通常使用する為の細かなセッティングを十分に行った後にそれらのデータを元にして少しずつ絞って行くなど、慎重に行う事をお勧めします。

急加速時などアクセルを全開にすると吸入される空気量はすぐに増加しますが、噴射された燃料は質量が大きい為、少し遅れてしまいます。この瞬間は混合気が薄まる為、必要な燃焼条件からずれて着火しにくくなります。 これらを解消してよりセッティングを高めるには加速ポンプ機能を使いその瞬間だけ濃い混合比にします。これはアクセルを開けた瞬間の空燃比を改善して、加速性能を向上させようとするものです。
この時の空燃比は、瞬間的に10:1前後に成ることもあります。本機にはこのような事が可能なデジタル加速ポンプ機能があります。加速ポンプ機能はエンジンの状態やチューンの関係上、特に必要ないエンジンに採用すればセッティング出辛くエンジンの調子を崩す事もあります。

全開走行時やサーキット走行の様なパワー走行時のアクセル全開時(スロットルバルブ全開時)はエンジンには大きな力を要求しています。 この様な時は、パワーがもっとも出ると言われる空燃比12.9~13:1にする必要があります。 レース車両などはこの数値がエンジンMAPの多くのエリアに当てはまる様にセッティングします。 このようなセッティングで、より大きなパワー走行が期待できます。通常燃焼室内の熱は、シリンダー/ヘッド/バルブシート等から放熱して冷却します。しかし、高回転/ 高負荷になると大きな発熱により温度は過度に上昇し、結果的にピストン/バルブの溶損などのトラブルを起こしてしまう事があります。
このような高負荷時には空燃比を濃くする事で燃焼速度が速くなったり、燃焼室内の温度が下げられる訳ですが、パワー空燃比の数値より濃く(数値が12.9以下)になると濃すぎて今度は燃えにくくなり逆に燃焼効率が悪化してパワーが落ちてきます。パワー空燃比を追及する場合でも濃いと良いと言う訳ではありません。

一般的な知識やセッティングのヒントを書いています。上記の事を参考にして下さい。ENIGMAでの燃料セッティングでチューニングライフをお楽しみ下さい。

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