通常インジェクション制御のエンジンは、吸入バルブが閉まってる間に燃料噴射を終わらせて、熱く熱せられたバルブ傘の裏側や吸入ポート壁面で「ジューッ」とガス化させ(気化させる)
とても燃えやすく、燃焼速度が速く、燃焼効率の良い気化燃料=高出力の条件を作っています。
この様な事から通常キャブレター車よりインジェクション車は優れていると言われています。
この、とても大切な「気化時間」を設定します。これは、噴射タイミングとも連動します。
インジェクション車の最大の利点は、吸入バルブが開いてる時に燃料噴射を「行わない」事です。
キャブ車の場合は、吸入負圧で吸い込む勢いでキャブから燃料が吸い込まれる為、バルブが開いて要る時に限り、霧吹きの様にしか吸入されません。
実際にエンジン出力を上げようとした場合、求められるのは燃料の量では無く、いかに「燃えやすいガス化した燃料が沢山入るか?」が重要に成ります。
例えば、吸入バルブが開いてる時にインジェクターから噴射が直接燃焼室に入った場合、霧化した状態の液体の粒なので低回転域では特に燃えやすいとは言えません。
(燃料噴射は霧吹きの様に液体に近い状態ほど燃焼を阻害します。)
インジェクターから燃料を噴射した瞬間からガソリン気化が進みますが、低回転域やエンジン温度が低い場合は、インテークマニーホールド内部に付着する量が増えるため、充填効率が悪化して
レスポンス等が悪化することがあります。
(これと似た現象例としてマニーホールドにインジェクターが付いてる位置が、バルブより遠いと気化が進むと言う現象もあります。)
このような事から、燃焼効率を上げる為には、適度な気化時間を作り出す事が重要になります。
多くのフルコンは噴射タイミング設定があり、クランク角の「何処で」噴射をはじめるか?を設定します。
早いタイミングは長い気化時間を生み出す事ができます。
しかし、これでは噴射開始タイミング⇒噴射時間⇒噴射終わりタイミング⇒気化時間⇒吸入バルブが開く・・・「これらを全て逆算して」それを各回転毎に、さらにTPS毎の
設定が出来る機器は、それも入力していく・・とても多くの難しい入力作業の必要がありました。
ENIGMAは、それら計算を全て自動で行いますので「ターゲット気化時間」を各回転毎に入力するだけで、逆算して「噴射開始タイミング」を自動で設定します。
自動計算のため、カムシャフトのデータが必要です。
チューニングパーツをお使いの場合、製造メーカーにお問合せください。
物理的にエンジン回転は高回転になるとクランクが1回転する「時間」が減少します。(早くなる)
したがって、4サイクルエンジンの1工程の時間は、高回転になればなるほど「短くなります」
この1工程の時間内で「噴射時間」と「気化時間」を確保しますが、以上の事から、どんな設定でも(大きな数値)出来るわけではありません。
直ぐに次の工程が来る高回転域は、物理的に次の噴射が来てしまうので、長い気化時間確保は無理です。
ENIGMAの操作ソフト(アプリ)は、ターゲット気化時間を入力し、お使いのカムシャフトの作用数値を入力すれば、カムデータからバルブ開閉タイミングを計算し、各回転の最大噴射時間=噴射量を自動計算して各回転の入力欄の下に表示してくれます。
これをメインMAP入力値と比べると、今の噴射時間(気化時間)が「足りているのか?」「設定の範囲に収まっているのか?」の判断目安になります。
例⇒8000回転で気化時間2500μsと入力した場合、
最大噴射量が6500μsと表示された。
この時、メイン燃料MAPを見ると入力していた噴射時間は7500μsだった・・・
計算された最大噴射量よりMAPに入力している噴射時間が大きくなっています。
このような場合、気化時間優先になるので吸入バルブが開いてる1つ前の行程時に噴射を始めてしまっている事になります。
これでは、綺麗に燃えにくい状態でお勧めできません。
これを正すには、多少の燃焼効率を犠牲にして「気化時間を少なくする」事です。
メインMAPの数値>気化時間設定 で計算された噴射時間です。
燃焼効率を犠牲にしたくない場合は、「大きなインジェクターに交換して」同じ燃料量を「短い時間」で噴射すれば良い事になります。
※大きなインジェクターは、時間あたりの噴射量がノーマルより多い。
基本は設定した気化時間で噴射出来る噴射時間をメインMAPで見比べ、越えた場合は、気化時間を少なくしていく方向で設定します。
また、気化時間は低回転/低負荷時は長く取る方が良いのですが、高回転では少し事情が変わってきます。
例えば、高回転域で気化時間が短く、気化が進んでいない霧状態で吸入させると、ガス化して無い分空気を多く吸入出来るメリットが出てくるからです。
ガソリンは気化すると(ガス化すると)体積が増えるため、高回転時に限り燃焼室への充填効率が上がります。
負荷か大きく圧縮スピードも高い為、このような条件になる高回転域に限りトルクが上昇します。
設定は、噴射量優先になります。それぞれの回転に応じて気化時間を設定していき、1工程前から噴射を始める様にならぬよう、セットアップする事をお勧めします。
気化時間設定は、例えば適当にどのような設定にしても、どこかのタイミングで設定した時間の噴射は行いますが、上記の事から燃焼室への充填効率(燃料の入り方)が設定により変わって来る事を考えておいて下さい。
場合によっては、逆に効率UPの為に使える設定でもあります。
いずれの場合も、インジェクター噴射率が97%を超える様な場合は、この問題以前に使用率がインジェクタートラブル原因になります。ご注意下さい。
※インジェクターは、1工程の中で必ず休憩時間が必要です。使用率が98~100%などになると殆ど吹きっぱなしと言う事になり、重大なトラブルの原因になります。
例:YAMAHA JOGZRの場合
開き(BTDC) 31度 サービスマニュアルより
閉じ(ABDC) 41度 サービスマニュアルより